今回は3Dプリンターを活用したABU 1750Aのスプール自作について紹介したいと思います。
マグネットブレーキを搭載しており、3g~くらいのルアーを着水時以外ノーサミングでキャストする事が可能になります。
渓流で1750Aを使ってみたい、という人の参考になれば幸いです。
3Dプリンターでスプールを製作する
最近はDMM.makeを始めとしたオンラインで3Dプリントを委託できるサービスが充実しているので、図面ファイル(STLファイル)さえあれば簡単にプリントする事ができます。
といってもそのSTLファイルを作るのが一つのハードルだったりするので、今回は↓のデータを公開します。(右クリックでダウンロードしてください。)
【シャフト穴が5.0mm版】
1750A_Spool_DMM_Nylon 20230311_5.0.zip
【シャフト穴が5.1mm版】
1750A_Spool_DMM_Nylon 20230311_5.1.zip
ダウンロードして解凍すると、拡張子が.stlというファイルになります。
【ダウンロードにあたっての注意事項】
・ダウンロードは無償ですが、ダウンロードの際には連絡を頂く事をマストとします。当サイトのContactページからダウンロードする旨のご連絡をお願いします。無断でダウンロードするのはおやめください。
Contactフォーム以外の連絡先をご存知の方はそちらから連絡頂く、でもOKです。
・3Dプリントの精度も上がっては来ていますが、素材によって0.2mmくらいは誤差が出るので、出力後に多少削ったりする必要があります。(プリントしたら即使えると思っている人はダウンロードしないでください。)
・このデータを使って作った物を販売したり、データそのものを販売したり、といった行動はしないようにお願いします。
・データの再配布もしないでください
・このファイルを使って製作したものによる損害などの補償は一切できませんので、自己責任にてご使用ください。
【図面データについて】
データは次の4つが1つのファイルに並べられたデータとなっています。
①スプール本体②マグネットブレーキ土台③マグネットブレーキ蓋④クリッカー用ギア
スプール寸法はこんな感じです。中央のシャフトを通す穴にはφ5mmのシャフトを通す事になりますが、3Dプリントすると僅かに穴が小さめに上がってくるので、φ5.0mmジャストで設計すると穴を削らないと通らない事が多いです。自分はドリルで毎度修正するのでφ5.0mm図面を使いますが、5.1mmの図面も用意しておきました。この場合は軽くヤスリで削るくらいで通るのでは・・と思います。
【シャフト穴5mm】
【シャフト穴5.1mm】
STLファイルをDMM.makeにアップロードするとこんな感じになるので、これをガラス入りナイロンで出力します。
このスプールのモデルは中空構造なので、中空構造に対応していない素材は選べません。
(詳しくはDMM.make内のデザインガイドラインを参照ください。)
この図面に関して出力実績のある素材はガラス入りナイロンのみとなっていますので、その他の材料だとどうなるかは不明です。
プリントしたスプールを組み立てる
スプール本体ができたら、シャフトの製作とマグブレーキの製作を行います。
材料と工具
必要な材料と工具はこんな感じです。この写真はファントムマグサーボのスプールを製作した時の物ですが、基本的に工具は同じでよいかと思います。
シャフトとブレーキ用の部品がちょっと変わります。
・マグブレーキ用のアルミパイプ:外形25mm、厚さ1mmのもの、長さ100mm程度以上(パイプカッターでカット作業できる長さ。実際に使うのは5mm)
・マグブレーキ用のステンレスパイプ:外形19mm、厚さ1mm、内径17mm。マグネットが付く必要があるのでSUS430などの400系のステンレスであること。
・マグブレーキ用マグネット:φ5mm、厚さ1mm 、5個
・シャフト用丸棒:φ2.5mm、長さ60mm以上、ステンレス
・シャフト用パイプ:外径φ3mm、内径φ2.55mm、真鍮、長さ100mm程度以上
・シャフト用パイプ:外径φ5mm、厚さ1mm、内径φ3mm、アルミ or 真鍮、長さ100mm程度以上
・内径1mmのOリング
・パイプカッター(パイプを切る用)
・軸付き砥石(φ25mm、φ19mmのパイプの内側のバリ取り)
・ワイヤーカッター(φ2.5mmの丸棒切断用)
・鉄工ヤスリ(シャフトのフラット面を削り出す)
・φ3mm&φ5mmのドリル(内径を出すため)
・金属みがき(シャフトを磨く為。ピカールでも可)
・マスキングテープ(シャフトをつかむ時に傷を付けない為)
・IOS-01(完成後に塗る)
・ノギス(0.05mm測れるもの。ちゃんとしたメーカーのが良い)
・電動ドリル(穴あけ、バリ取り、スプール外周を削る時に使用)
・小型バイス:シャフトを削る時に使用
・メタルロック接着剤(シャフト固定用)
・小型ヤスリ(シャフトの形を整える)
・紙ヤスリ(スプール外径を整える)
・モンキー(リール本体分解用)
・ドライバー(リール本体分解用)
・ピンセット(Oリング取り付け用)
作り方
まず材料を切り出します。φ2.5mmのシャフト、φ3mmのパイプ、φ5mmのパイプをそれぞれ所定の長さに切り出します。
φ2.5mmのシャフトは60.0mm
φ3mmのパイプは43.0mm
φ5mmのパイプは39.0mm。
0.1mm単位の精度が必要なので、1mmくらい長く切り出してヤスリで端面を整えつつ長さを調整、といった感じで合わせていきます。
カットしたらφ2.5mmのシャフトにφ3mmのパイプをかぶせます。φ3mmのパイプはピニオンギアの内側に入るのですが、ピニオンの内径はφ2.8mmなので、外側を削る必要があります。
パイプにテープを巻いて保護し、ドリルチャックで掴んで回しながら紙やすりで外周を削っていきます。
続いてφ5mmのパイプにピニオンと合わせる為のフラット面を作ります。バイスでパイプを挟み、2mm程度のフラット面をヤスリで削り出します。
削るとこんな感じになります。
削り終えたら接着です。ヤスリで表面を荒らしてからメタルロックで接着していきます。
シャフトとパイプの位置関係は既存のスプールと比較しながら行ってください。シャフト端からピニオンギア端が同じ長さになるようにします。
シャフトができたらスプール本体に接着します。接着する位置は既存スプールを参考に、スプールの左右位置が同じになるようにします。
ちなみにスプールの左右位置を確認する時は一度仮組みして確認していただくのが良いと思うのですが、スプール端が本体の真鍮のプレートに干渉することがあると思います。
干渉する場合は彫刻刀でエッジを削って回避します。ここの厚みをもう少し薄くしておけばいいのかもしれませんが、3Dプリントの制約で厚さは1mm以上、というのがあるので仕方ないですね。
接着はメタルロックで。ピニオン側は接着材を多めに盛ってもピニオンと干渉しなければ問題ありません。
パーミング側はクリッカー用のギアを取りつけるので、あまり接着剤を盛らないようにします。
続いてブレーキ用のパイプの切り出しを行います。φ25mmのアルミパイプは幅5mmに、φ19mmのステンレスパイプは幅5.5mmくらいにカットします。
アルミのパイプは↓の写真のように接着します。
ステンレスのパイプは↓のようにはめ込んで接着します。ここはアロンアルファで良いかと。
続いて蓋を上からはめ込んで接着します。
最後にクリッカー用のギアを接着します。ここはメタルロックで。
接着材が乾いたらピニオンを取り付けます。ピニオンをはめ込んだ後に内径1mmのOリングを通して固定します。写真だと見にくいと思いますが、シャフトのOリングの位置を少しヤスリで削って凹ませています。
ピンセットを使ってOリングを入れます。
嵌めるとこんな感じです。
サイドプレートと干渉していなければOKです。
最後は本体への組み込みです。
マグネットブレーキは遠心ブレーキ用の枠に押し込みます。緩い場合は両面テープなどを巻いて少し太くしてから押し込みます。
マグネットはN/Sを交互に配置します。個体差もあると思いますが、おそらく2個~5個くらいの範囲で調節するとよいかなと思います。(自分は大体2個か3個で使っています。)
最後にスプールの外径の調整を行います。おそらく最初は若干ボディに干渉すると思いますので、ヤスリで外周を整えていきます。
シャフトにマスキングテープを貼って保護した上でドリルでチャックし、ドリルでスプールを回しながら削ると良いと思います。
干渉がなくなり、スムーズに回るようになったら完成です。
実釣にて
渓流で動作確認してきました。
4.0gのリュウキ45Sは余裕でキャスト可能。
冒頭でも触れましたが、3.0gのシルバークリークミノースローフォールカスタムあたりまではノーサミングでキャストできました。
無事にイワナをキャッチ。実釣可能なスプールができました。
まとめ
という事で今回は1750Aのスプールの作り方の紹介でした。
シャフトが3層構造なのでちょっと面倒ですが、興味のある方はトライして頂ければと思います。
最後に、製作にあたって必要そうなものの商品リンクを以下に貼っていきますので、参考にして頂けると幸いです。(ポチっとして頂けると励みになります。)
アルミパイプ φ5mm
ステンレス丸棒 φ2.5mm
真鍮パイプ φ3mm(内径2.55mm)
パイプカッター
卓上ミニバイス
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