日本のルアーフィッシングに於いて、リールに関して言うとスピニングリールとベイトリールが主流。
しかし、バス釣りの本番アメリカではその2つと並んでスピンキャストリールが一定のポジションを確立している。
【スピニングリール】
【ベイトリール】
【スピンキャストリール】
見た目的にも機能的にもスピニングとベイト両方の要素を兼ね備えているので、使い方によっては日本でももっと流行っていいのではないかと思う。
今回はそんなスピンキャストリールの使い方についてまとめてみる事にした。
少しでもスピンキャストリールの使い手=スピンキャスターが増えたら嬉しい。
スピンキャストリールとは?
スピンキャストリールとは、スピニングリールのようにロッドと同軸方向に配置されたスプールと、スプールにラインを巻き取る為のローター、及びそれらを覆うフロントカップを備える事を特徴としたリールである。
フロントカップでリールの正面が覆われている事から、クローズドフェイスリールとも呼ばれる。
操作が容易でライントラブルが少ない事がメリットとして挙げられる一方、飛距離が若干伸びにくいというデメリットがある。
ベイトリールのようにロッドを持ったときにリールが上に来る物をスピンキャストリール、下に来るものをアンダースピンキャストリールと言う。
スピンキャストリール
アンダースピンキャストリール
画像出典:ダイワ
スピンキャストリールの構造
構造を簡単に図で書くとこんな感じ↓
ラインはフロントカップに設けられた穴を経由してスプールへと誘導される。
スプールとフロントカップの間に設けられたローターにはラインを掛ける為のピックアップピンが設置されており、ハンドルを回すとローターが回転する事でラインがスプールに巻き取られるように出来ている。
ドラグは調整用ダイヤルがリール本体上部に設置されている事が多いが、中にはベイトリールのようにハンドル横にスタードラグが設置されている物もある。
↓オメガプロの例。OMEGA PROの文字の右にある銀色のダイヤルがドラグダイヤルである。
アンダースピンキャストリールの場合はリアドラグを採用している物が多い。
リール後方にはローターを前方に押し出す為のボタンが付いている。
これを押す事でラインを保持し、離すとラインがフリーになる仕組みになっている。
【①ボタンを押し込んだ状態】
【②ボタンを離した状態】
アンダースピンキャストリールの場合はボタンの代わりにトリガーが設置されており、トリガーを引く事でラインを保持し、離すとラインがフリーになるような仕組みになっている。
使用方法
キャストとリトリーブ
投げて巻いてくる場合の流れは以下の通り。
①キャストする際にはリール後部に設けられたボタンを押す事によってピックアップピンがローター内に待避する。
それと合わせてローターが前進する事でラインはフロントカップとローターに挟まれて保持される。
②ロッドを振って、適切なタイミングでボタンから指を離すとラインがフリーになり、ルアーは前方へ飛んでいく。
③ルアーが着水した事を確認してからハンドルを回すと、ローターが定位置に戻ると同時にピックアップピンが飛び出して、糸を巻ける状態に戻る。
④手元にルアーが戻ってくるまでラインを巻き取り、①へ戻る。
内部の構造を含めて文章で書くと少しややこしく見えるが、シンプルに言えば、
①ボタンを押す
②ロッドを振ってボタンを離す
③巻く
の3ステップの繰り返しで使える。
更に①②は片手で可能なので、使い方としては非常にシンプルなのが特徴である。
簡単に動画にしてみた↓(約4MB)
ボタンを離すタイミングがわかりにくい・・・?
普段スピニングやベイトリールを使っていて、初めてスピンキャストを使うと恐らく最初は全然ボタンを離すタイミングが合わないと思う。
これは何故かというと、スピニングやベイトの場合はラインに直接触れているのでルアーの重みが指から伝わってくるが、スピンキャストはラインに指が触れていない事でその感覚が失われるからである。
これをカバーするには、ラインというよりはロッドから伝わってくるルアーの重みを感じてタイミングを取る事が必要である。
そこで最初のうちにおススメなのが、垂らしを極力短くして投げる事。
こうする事で、ルアーの重みをよりダイレクトに感じる事ができる。
ドラグの調整
ドラグはドラグダイヤルを回すことで調整できる。
本体上部にダイヤルがある物はロッドを持った方の手の親指で調整ができる。
このタイプの物はスピニングリールと同じようにスプールが回転してラインが出る構造になっており、滑らかにラインが出て行く物が多い。
スタードラグ式の場合はベイトリールと同じようにハンドルを持った方の手で調整を行う。
この場合はベイトリールと同じように、ドライブギヤを経由してハンドル側に取り付けられたドラグワッシャーを滑らせる事になるので、ドラグの微調整という点では上部ダイヤル式に比べると劣る場合がある。
スプールの特徴
スピニングリールと比較するとスプール幅が狭い物が多いのが特徴。
ラインを均等に巻く為にスプールが上下するオシュレート機構も無い物が多く、幅が狭いスプールを深くする事でラインキャパシティを確保しつつ、ある程度均等に巻けるような仕組みになっている。
なので、スプール底部に巻かれたラインは巻き癖も強く、放出抵抗も大きくなる。
従って、ラインキャパシティの半分くらいが快適に使えるライン長さだと思う。
ローターについて
回転してスプールに糸を巻く、という点ではスピニングリールと同じ。
しかし、スピンキャストリールのローターの方が構造がシンプル且つ軽量なので、軽い力で回せる、回転時のブレや振動を少なくしやすい、といったメリットがある。
一方、スピニングと違ってラインが常にローターに接触している状態になっている事でラインが擦れるのがデメリット。ラインへのダメージを抑える為に、なるべく滑りが良い素材の物がオススメ。
実物だとこんな感じ↓
また、スピンキャストリールのローターにはキャスト時にラインを押さえるといった役目もある。
リールによっては先端にゴムや樹脂等の柔らかい素材が貼り付けられており、ラインを保持しやすくする工夫がされている。
ピックアップピンについて
スピンキャストリールの使いやすさを語る上で避けて通れないのがピックアップピン。
これにラインを引っ掛けて巻き取る仕組みなので、ラインは常にピックアップピンと擦れている状態になる。
なるべくラインへの負荷を減らす為に、材質をセラミック等の摩擦係数の低いものにしたり、ローラーを付けたりと、各社それぞれに工夫をしている。
↑はスピンキャスト80のピックアップピン。2重構造になっており、外側の筒が回転するようになっている。
ラインの巻き方
ラインを巻く時はフロントカップを外し、フロントカップの穴に糸を通してからスプールに糸を結ぶ必要がある。
糸巻量が結構重要で、少なすぎると深いスプールのせいで放出抵抗が大きくなるし、多すぎるとローターと干渉してトラブルの元となる。
なのでスプールの8割程度を目安に巻いてやると良いと思う。
↓オメガプロに最初から巻いてあったラインの量。やや少な目になっている。
スピンキャスト向きのライン
スピンキャストリールの特性を考えると、小型スピンキャストリールなら4lb~8lb、中型のスピンキャストリールなら6~12lbのナイロンラインがオススメ。
ラインの太さについて
ローターとピックアップピンにラインが擦れる仕組みからすると、あまり細いラインは使わない方が良い。
逆にラインが太いとフロントカップ内で抵抗になる事から飛距離が伸びにくくなる。
という事で、リールのサイズに合わせて細すぎず太すぎず、といったラインを選ぶ必要がある。
ラインの種類について
まずPEラインはあまりオススメしない。
スプールが細く、スピニングリールやベイトリールと比較するとラインの層が厚くなるスピンキャストリールでPEを使うと、積層したラインにラインが埋まってしまうトラブルが発生する。
また、ラインがピックアップピンとローターに擦れる構造からすると、耐磨耗性の低いPEラインではライン寿命の低下のリスクもある。
ローター材質によっては逆にローターの方が削れる可能性もあるので、基本的には使わない方が良い。
フロロについては耐磨耗性という観点で言えばPE程問題にはならないが、張りが強い、癖が付きやすいという観点からするとラインの放出抵抗が大きくなり、飛距離が伸びにくくなる、という懸念がある。
従って、ナイロンラインをマメに巻き替えるのが一番快適に使える方法だと思う。
ロッドについて
グリップ
昔ながらのスピンキャストリールにはオフセットグリップのロッドを合わせるのが定番だったが、昨今のスピンキャストリールはロープロファイル化が進んでおり、普通のベイトロッドと合わせて使った方が使いやすい物が多い。
ポイントはボタンの位置の高さ。
これが高いとオフセットグリップの方が操作しやすく、低いとストレートグリップの方が操作しやすい。
アンダースピンキャストリールの場合はスピニングロッドと組み合わせればOK。
ロッドアクション
少し悩ましいのが合わせるロッドのアクション。
ラインの太さやリールの特性を考えるとスピニング寄り、つまり柔らか目のアクションが望ましいが、グリップ形状はベイトロッドと同じなので、柔らかいベイトロッドが必要になる。
バス用だとベイトフィネスロッドが良い。
↓ベイトフィネスロッドと組み合わせればスモラバから1/2oz程度のハードルアーまでを快適に扱える。
とは言え、ベイトフィネス専用ロッドはそこそこ値段が張るものが多い・・・というのが難点。
そんな時にオススメなのがトラウト用のベイトロッド。
スピニング並みの柔らかさの物が多いので、スピンキャストとの相性が良い。
一方アンダースピンキャストリールの場合はスピニングロッドが使えるので選択の幅は広い。
鱒レンジャーCTがオススメ
今の所管理人は鱒レンジャーCTと組み合わせて使っている。
グラスロッド独特の柔らかさがあり、使ってて楽しいロッドである。
スピンキャストリールのメリットとデメリット
メリットとデメリットについて少し考察を。
メリットについてはこんな感じ↓
メリット1:ライントラブルが少ない
スピンキャストリールのメリットと言えばまず挙げられるのがトラブルの少なさ。
理由は2つ。
・スプールの周囲がカバーで覆われている事
・カバーの入り口が細い事
スピニングリールを使ってる時にトラブルになるのが、ヨレたラインがスプールから溢れる事。
スピニングリールの場合はスプール周りの空間に何も無いので、ラインが飛び出そうと思ったらいくらでも飛び出せる環境である。
しかし、スピンキャストリールの場合はスプールのすぐ近くにフロントカップで壁が形成されているので、飛び出す事を防ぐ事ができる。
また、ラインが飛び出すもう一つの原因に、巻き取る時のテンションが不足している、というパターンがある。
スピニングリールでこれを避ける時は恐らくリールの手前でラインを指で摘まんでテンションをかけると思うが、スピンキャストリールの場合はこの動作をフロントカップが代わりにやってくれる。
フロントカップの小さな穴を通すことで必要最小限のテンションがかかるようになっている。
メリット2:手返しが良い
スピニングリールの場合はベールを返す必要があるが、スピンキャストリールの場合はボタンを押すだけで同様の動作をするように出来ている。
キャスト後もベールを起こす必要が無いので、スピニングリール対比では少ないステップで扱う事ができる。
この点に関してはベイトリールに近い。
メリット3:ラインをフリーにできる
手返しはベイトに近いと言いながらも、ラインの出方はスピニングに近いスプール構造なので、スプールを回転させずにラインを出す事ができる。
なので、投げた後のルアーをフリーフォールさせるのにはスピンキャストの方がベイトより有利。
かといってスピニングのように一気にどっさりラインが出て絡まる、といったリスクは少ないので、手返し良くカバーの際にルアーを沈める、といった使い方に向いている。
例として、足元3m先くらいのカバーを狙う場合。
振り子のようにルアーを揺らして、ルアーが前に振れた所でボタンを離すだけでいい感じに飛んで沈んでいく。(動画:約6MB)
敢えてフワッと投げてみたが、ベイトだとコレは結構難しいと思う。
と、ここまでだとスピニングとベイトのいいとこ取りみたいな感じだが、当然デメリットもある。
デメリット1:飛距離が伸びにくい・・・?
フロントカップの穴をラインが通る事で適度な抵抗が生まれるからこそライントラブルが減る訳だが、投げる時にも抵抗になるので、その分飛距離は落ちる。
これについては、しなやかで滑りの良いラインを使う事でかなり緩和されるので、細目のナイロンラインがオススメ。
ただ、構造上多少抵抗があるのは間違いないのだが、実際にどれくらい飛距離が違うのか?というと・・・
検証:2.5gのスモラバをスピニングと投げ比べてみた。
スピンキャスト×ナイロン8lbライン
スピニング×ナイロン5lbライン
実際やってみると、スピンキャストが20m、スピニングが21mというところ。
僅かに違いはあるものの、実用上はほぼスピニングと大差ないと言っていいと思う。
デメリット2:ラインが劣化しやすい
ローターとピックアップピンの所でも述べたが、ラインが常に擦れる仕組みになっているのがデメリット。
擦れる部分の表面処理を工夫したりして緩和しているものの、ローラーにしかラインが触れないスピニングと比較するとどうしても劣化しやすいのは否めない。
デメリット3:サミングがしにくい
ラインを直接触れなくても投げられる構造上、逆にラインに触れて距離を調整するのはやりにくい。
ベイトの場合は親指で、スピニングの場合は人差し指でスプールを押さえてやればいいのだが、スピンキャストの場合にボタンでそれを再現するのは結構難しい。
やはり人間の指先の感覚は優秀で、ラインを触れる事で微調整が効くからである。
ボタンを押してやることでその場で止めるのは簡単だが、微妙な調整をしたい場合は反対の手を添えて調整する必要がある。
右投げ右巻きの場合だと、キャストして着水するまでに左右持ち替えることになると思うが、その際にフロントカップの穴に人差し指を当ててやればサミングが可能。慣れてくると意外とうまい事サミングできる。
スピンキャストリールの使い所
初心者の練習用に
まず最初に思い付くのがコレ。
操作のシンプルさとライントラブルの少なさから、小さい子供が初めて使うには持ってこいである。
スピンキャストの本場アメリカのショッピングサイトのユーザーレビューを見てみると、結構な高確率で「孫の為に買った所・・・」というレビューが見られる。
アニメをイメージしたデザインの物があったりするのも子供が使いやすい仕組みだからだろう。
SHAKESPEARE(シェイクスピア) キャラクターセット竿
エリアトラウト用に
個人的にはエリアトラウトと親和性が高いと思う。
手返しの良さはそのまま釣果に直結する。
また、使うラインも細いので飛距離のデメリットも小さい。
ギア比が低いモデルが多いスピンキャストリールだが、エリアトラウトの場合にはゆっくり一定速度で巻く事が有効なシチュエーションが多いので、ギア比の低さが逆にメリットとなる。
更にドラグ調整がしやすく、スピニング並みにドラグが滑らかなので、ファイト中にドラグの微調整を行う事が多いエリアトラウトには最適と言える。
バス釣りでの活用
手返しの良さを生かすなら近距離でテンポ良くカバーを撃つような釣りが良い。
単純に手返しとカバー攻略性能で言えばベイトタックルの方が良いが軽量ルアーへの適応性と、フリーフォール時のスムーズさからすると、少し水深のあるライトカバー周りで使うといいのではないだろうか。
但し、ギア比が低くてライン回収は遅いので、遠目のカバーをちょっと撃って回収、というよりは足元のカバーをフワッと狙う、といったイメージに合いそう。
例えば浮きゴミの中にスモラバを吊るすような釣り。狙いの枝を乗り越えた次の瞬間にラインをフリーにしたり、深さを刻んだりする時にレバーやボタンで簡単にラインを出せるのは便利。
ハンドル1回転あたりの巻取り量が60cmを超えるくらいのリールを使えば更に快適になる。
また、対岸が階段状に深くなるような所をダウンショットなどで狙う時は、少し巻いて沈めて、少し巻いて沈めて・・のような操作をするが、これがベイトやスピニングと比較すると格段にやりやすい。
バーサタイルスタイル
6lb~8lbくらいのラインを巻くことで、そこそこ良く飛んで、そこそこカバーを狙えて、手返し良く軽量ルアーも扱える、といった感じでバランス良く使う事ができる。
一本のタックルでアレコレしたい、というおかっぱりにピッタリとも言える。
↓1.4gのスモラバ(トレーラー込みで総重量3.5g)も普通に投げられる。(ラインはアメリカサイズのナイロン6lbなので約8lb)
↓プチピーナッツ(4.5g)も余裕で投げられる。
だったらベイトフィネスでも・・・と思うかもしれないが、どう適当に投げてもバックラッシュしないので、藪の隙間からヒョイっと投げるような感じでも結構ちゃんと飛ばせる、といった点ではベイトフィネスに勝る。
↓こういうシチュエーションで右側を狙うような場合に有利。ベイトフィネスだと、ちゃんとロッドを振らないと思ったように飛ばなかったりする。
当然環境によるが、物凄く遠投しないといけないとか、カバーが濃くて太刀打ちできない、とかでなければ結構汎用性が高いリールだと思う。
使った後は
メンテナンス方法は基本スピニングやベイトと大差ないと思うが、1点だけ違うのがフロントカップ内に水分が溜まる事。
オメガプロのようにフロントカップに穴が開いているものはまだいいが、そうでないものは中々ラインが乾かない→水分に弱いナイロンには良くない、という事になるので、使用後はカップを外して乾かすのを忘れずに。
まとめ
ここ最近改めて使い始めてみたところかなり面白いリールである事を再認識。
普段ほとんど右投げしかしないのだが、スピンキャストで左投げをしてみた所なぜか凄くやりやすい事に気づいた。
推測だが、スピニングやベイトの場合は思いのほかラインやスプールから受ける感覚を重視しているので同じレベルを左手で再現するのが難しく、右手と左手のレベルの乖離が大きいのではないだろうか。
これに対し、スピンキャストの場合はボタンを押すだけでラインの触り心地などはわからないので、右でも左でもあんまり変わらない、という事なのでは、と思う。
少し練習してみたところ、ピッチングに関しては左右どっちでもできるようになったので、おかっぱりで進行方向に対して右側が水なら左投げ、左側が水なら右投げ、みたいな使い方ができる。
【左手で投げる場合】
【右手で投げる場合】
岸際に背の高い草が延々と生えているような場所で使うと良さそうである。
あとはギア比が高いモデルさえあれば、おかっぱりで1本で何でも、という用途にぴったりなんだけどなぁ・・・
まあ現時点でも有効なシチュエーションがあるのは間違い無いので、ラインナップの1つに加えて使い分けていこうと思う。