渓流ベイトフィネスには雰囲気的に丸型アンバサダーが良く合うのだが、このところ中古価格がどんどん高騰していてなかなか手を出せないのが現状である。
もう少し安く手に入る丸型アンバサダーは無いものか・・・と探してみたところ、90年代にリリースされたと思われる丸型のプロマックス、ブラックマックス、シルバーマックス等は結構安く流通している事がわかった。
しかしこれらのリールにはベイトフィネススプールが無い。
ならば自作するしかない・・・と思って方法を考えていた時にふと思い付いたのが、「3Dプリンタでスプールは作れないか」という案。
樹脂のスプール自体は昔のミリオネアGS1000C等にも採用されているし、最新の3Dプリンタなら精度も出せるのではないだろうか。
そこでネットでアレコレ探して辿り着いたのがDMM.make。
アクリル素材のUltra Modeであれば積層ピッチ29μmといった高精度で出力できるのでスプールに必要な精度が出せるのではないだろうか。
という事で今回は実際にDMM.makeを活用したスプール作りについて紹介してみたいと思う。
DMM.makeの3Dプリントサービスとは?
簡単に言うと、3D図面をアップロードしたらDMMが持っている3Dプリンタでモデルを造形し、出来た物を送ってくれるサービスである。
メリットとしては
・家庭用では出せない精度を誇る業務用の3Dプリンタを使える
・プリントのコツやノウハウを持った人に出力してもらえる
といった所だろうか。
更にDMM.makeの凄い所は図面のチェックから見積りまでが自動処理で一瞬で行われる事。
上手く行けば一言も会話する事なく一連の作業が完結するため、コミュ障の自分には大変ありがたいサービスである。
更に価格の考え方が明快且つ安価なのもGood。
一般的に個人がオーダーメイドで部品を作ると○万円、とかが普通だが、スプールくらいなら○千円くらいで作る事ができる。
強いてデメリットを挙げるとすればホントに小さい部品でも1000円以上はかかるのでそういった物は割高感があるかな・・・くらい。
なので家庭用プリンタで出せないような精度の物を頼む場合は十分にその価値はあるのではないかと思う。
BM3600Cのスプールを作ってみた
自作スプールの対象として最初に選んだのがBM3600C。
フルメタルボディの丸型リールで、黒いボディカラーがカッコいいモデルである。
更にこの世代のリールはウルトラキャストと言うスプールシャフトとスプールが別々になる構造なので、スプールシャフトは作らなくて良いというメリットもある。
手順としてはまず最初に図面を描く。
ここが1つのハードルなのだが、TINKERCADというWebブラウザ上で動作する簡易3D CADを発見した事で簡単に作図する事ができた。
デザインのポイントとしては、樹脂の特性を考慮するということ。
アクリル樹脂は比重がアルミの半分以下なので軽い反面、曲げに対する変形率はアルミと比べてかなり大きいので、アルミスプールと同じように設計すると簡単に曲がってしまうと思われる。
なので厚みを増やしたり、支える点を増やしたり、といった工夫が必要となる。
出来た図面はこんな感じ↓
これを3Dプリント用のSTLファイルという形式で保存する。
DMM.makeにアップロード
STLファイルをアップロードすると自動で造形の可否チェックと見積りが行われる。
造形可、と判断されると選べる材料と価格が提示されるので、後は材料を選んで発注すればOK。
但し、形状によっては発注後にメールで「ここが薄すぎて破損するかもですが良いですか?」とか、「やっぱりこの形は造形不可です」といった連絡が来たりするので注意。
出来上がり
無事に造形が始まれば後は待つだけ。
出荷目安日数が材料毎に記載されているが、目安より早く着く事が多い。
出来上がったスプールはこんな感じ↓
精度は記載されているスペック通りで、アクリルのUltra mode だと±0.05mmに大体収まっている感じ。(精度0.05のノギスで測ってるので若干怪しいけど。)
φ10のベアリングを受ける穴を10mmジャストで描いたら削らないと入らず、10.1mmで描いたら軽く擦ったら入る、10.2mmで描いたらスカスカ、といった感じ。
スプール外周は元々のスプールがφ32mmジャスト立ったので同じくφ32mmジャストで描いてみたが、ボディと干渉する事なくスムーズに回った。
使ってみた感じ
まず、家で軽く投げてみた感じがコチラ↓
で、その後管理釣り場で使ってみた様子がコチラ↓
SM3000C、プロマックス3600Cも同様にDMM.makeで作ったスプールを搭載して使ってみたが、一応3台ともニジマスをキャッチすることに成功。
2g台のクランクなんかも投げられるようになっているので、ベイトフィネス化は成功と言えるのではないだろうか。
まとめ
結論としてはDMM.makeを使えば実用可能なベイトフィネススプールが作れる、という所だろうか。
その後ミリオネアST-10ACや中華アンバサダー用のスプールも作ってみたりしたが、それなりに使えるようになっている。
マイナーなオールドリールを現代でも通用するように改造できるので、これからもDMM.makeを活用していこうと思う。