最新のリールに採用される事はまず無いのだが、渓流ルアーの世界では未だに根強い人気を誇っているのがインスプールのスピニングリール。
カーディナル33を筆頭に何種類かのリールが現役で使われており、中古市場では結構な値段で取引されている。
バス釣りではあまり使われていないので、個人的には「まあ古いものを有り難がる懐古厨が値段吊り上げてんだろな・・・」くらいに思っていたが、渓流ルアーを少し真面目にやりはじめたらその魅力に気付き、いつの間にか6台ほど購入するに至った。
使ってみると意外と実戦向きで使いやすく、渓流ルアーに向いているのが少しわかった気がする。
という事で今回はインスプールのスピニングの魅力と購入する上での注意点なんかをまとめてみたいと思う。
インスプールとは?
インスプールとはスピニングリールの分類の一つである。
スピニングリールのうち、ローターに対してスプールが内側になるものをインスプール、外側になるものをアウトスプールと言う。
それぞれの構造は以下の通り。
インスプールタイプの場合、ローター形状、スプール形状をシンプルにできるというメリットがある一方で、スプールシャフトにラインが絡みやすいというデメリットがある。
アウトスプールタイプの場合はスプールがローターの外側になり、さらに外側にベールアームが配置される構造の為、インスプールと比較するとローター構造が複雑になる。
その反面、スプールシャフトへの糸絡みという点では有利であり、昨今ではアウトスプールタイプが主流となっている。
インスプールタイプが廃れた理由として大きいのがライントラブルの多さ、という点だと思うのだが、逆に言えばトラブルが起きにくいシチュエーションで使う分には問題無く、その条件に渓流ルアーはマッチするので未だに現役で使われているのだと思う。
また、インスプールだから必ずそうしなければならない、という訳ではないのだが、ベールアームを手動ではなくハンドルを回す事で返す仕組みのリールが多いのもインスプールの特徴の一つ。
これについては釣りの種類によってメリットにもデメリットにもなる。
投げて巻く、を繰り返す渓流ルアーのような釣りでは手返しの良さがメリットになる一方で、バス釣りのライトリグを使う時のように「少し糸を出してフォールさせて止めてまた巻いて・・・」といった動作を繰り返す場合には、いちいちハンドルを回す煩しさがデメリットとなる。
もう一つ注意したいのが糸ヨレの発生頻度。
これもインスプールだから、という訳ではないのだが、単純に昔のリールであるため、今で言う所のダイワのツイストバスターのような機能が無く、糸ヨレが激しい事が多い。
対策としては極力糸フケを出さないという手法が挙げられるが、これについても常にラインにテンションをかけながら投げて巻く、を繰り返す渓流ルアーの場合は回避しやすい。
逆にラインをフリーにする事が多いバス釣りのライトリグなどには向かない、と言う事になる。
結論としてはインスプールタイプのリールにはデメリットがあるものの、渓流ルアーだとフォローできる部分が大きく、且つメリットの部分も活きるので、今でも現役で通用する、という事になるのかな、と思う。
インスプールタイプの代表的なモデル
アブガルシア カーディナル33
まず外せないのがカーディナル33。
クラシックな見た目と、ウォームギアによる滑らかな駆動、操作しやすく効きもまずまずのスターンドラグなどの現在でも通用する機能性から高い評価を受けている。
お陰で市場での流通量も多く、サードパーティー製のメンテナンスパーツも容易に手に入るので、インスプールタイプを使ってみるとすれば最もオススメなリールと言える。
ただ一方で、人気のあまり価格が高騰しやすいのがネック。イメージはこんな感じ↓
ほぼ新品、箱付き:20000円~
綺麗な個体、箱なし:15000~
キズ、使用感あるが使える:10000~
【評価】
価格:★★
入手しやすさ:★★★★★
巻き心地(滑らかさ):★★★★★
巻き心地(軽さ):★★★
ローターのバランス:★★★
ドラグの調整:★★★★
ハンドルの左右入れ替え:不可
右ハンドルモデル:なし
また、注意したいのがラインの偏り。復刻版と言われる物は結構な確率でラインが後ろ寄りのプリン巻きになる。
そのまま使うとトラブル多発で嫌になってしまうと思うので、もし購入する場合は事前に巻き具合を確認するか、自分で直す覚悟をしておいた方がいいだろう。
ミッチェル408
カーディナル33と同じくらい人気があるのがミッチェルの408。
ネイビーブルーの408はスパイラルベベルギアによる5.5:1の高速ギアと、プラナマティックと言うミッチェル独特のオシュレーションシステムが特徴で、中古市場でも高値が付く事が多い。
流通量が少ないのと、予備部品の入手がカーディナルと比較すると難しいのがネックではあるが、よく折れると言われるベールスプリングなどは普通に流通しており、なんとか維持できるかな、という所。
価格のイメージはこんな感じ↓
ほぼ新品、箱付き:20000円~
綺麗な個体、箱なし:15000~
キズ、使用感あるが使える:10000~
※ネイビーブルーの408の場合
ほぼカーディナルと同じくらいの価格イメージ。但し、新品に近い箱付は流通量が少ないので高騰しやすい気がする。
80年代に作られた黒い408だともう少し安いと思う。
【評価】
価格:★★
入手しやすさ:★★★
巻き心地(滑らかさ):★★★★
巻き心地(軽さ):★★★
ローターのバランス:★★
ドラグの調整:★★★★
ハンドルの左右入れ替え:不可
右ハンドルモデル:あり
カーディナルと比較するとローターのバランスがやや悪く、リール単体で回すと振動する。ただまあロッドに付けてしまえばそこまで気にならないと思う。
ハンドルの左右入れ換えは出来ないが、409という別モデルで右ハンドルのモデルも存在するので、左利きの人にはこっちの方がオススメ。
あと注意したいのが年代によってラインローラーが回らない棒状の物で出来たモデルがあること。
中古で購入する時には確認しておきたい。
ミッチェル308
外形は408と同じだが、ギアの違いで少し巻き取り速度が遅いのが308。ボディカラーはブラックでカッコいい。
ベベルギアのモデルはゴロゴロ感が半端ないので現代人が最初に触った時は驚くと思うが、何故か不快でないのと妙に軽快なのもあって、ハマるとクセになりそうな巻き心地である。
70年代のプラナマティックオシュレーション付きのモデルが人気だが、流通量が408より多いこともあって値段は少し安め。
価格のイメージはこんな感じ↓
ほぼ新品、箱付き:15000円~
綺麗な個体、箱なし:10000円~
キズ、使用感あるが使える:5000円~
80年代以降に作られたローター下部に赤ラインの入ったモデルだともう少し安くなると思う。
【評価】
価格:★★★
入手しやすさ:★★★★
巻き心地(滑らかさ):★★
巻き心地(軽さ):★★★★★
ローターのバランス:★★
ドラグの調整:★★★★
ハンドルの左右入れ替え:不可
右ハンドルモデル:あり
ローターの振動は408と同様に大きめ。
ハンドル1回転あたりの巻き取り量が408より少ないので、少し頑張って巻く必要がある。
大森製作所 ダイヤモンドマイクロ7 デラックス
オールドリールにしてはかなり完成度が高いのが大森製作所のダイヤモンドマイクロ7デラックス。
ローターのバランスがかなり良く、ローター内にバランスウェイトが無いのに回転時のブレはほぼ無い。
現代では当たり前となっているハイポイドフェースギアを初めて採用したのが大森と言われているが、お陰で回転は滑らかであり、現代のリールと殆ど変わらない巻き心地を実現している。
金属フレームで剛性は十分な一方で重量は200gを少し切るくらいの軽さで、1日使っても疲れる事は無さそうである。
と、良いことづくめな気がするリールだが、問題なのは流通量の少なさ。
綺麗な個体を見つける機会も少ないが、予備部品となるともっと見つからないので、壊れたら自分で直す覚悟が必要となる。
価格的には程度にもよるが5000円~1万5000円の間くらいかと思う。中古で出回る数がさほど多くないので予想が少し難しい。
【評価】
価格:★★★
入手しやすさ:★★
巻き心地(滑らかさ):★★★★
巻き心地(軽さ):★★★★
ローターのバランス:★★★★★
ドラグの調整:★★★
ハンドルの左右入れ替え:不可
右ハンドルモデル:あり
スプールがワンタッチでなかったり、ハンドルのノブが交換できなかったり、といったデメリットもあるので注意。
でもトータルで見ると凄く良いリールだと思う。
ガルシア3800
アブに吸収される前のガルシア社がミッチェルを意識して作ったと言われるリールがガルシア3800。
ハイポイドフェースギア採用で巻き心地は滑らか。更にこの時期のリールにしては珍しくハンドルの左右入れ換えが可能なのが良いところ。
欠点としてはローターのバランスがあまり良くなくて回転時のブレが大きい所と、流通量の少なさによる予備部品の入手性が悪い所かな。
元々大ヒットしたようなリールではないので、中古市場で見掛ける機会はかなり少ない。
その為価格は安めで、数少ない過去データによると概ね5000円~10000円で取引されている。
【評価】
価格:★★★★★
入手しやすさ:★
巻き心地(滑らかさ):★★★★
巻き心地(軽さ):★★★★
ローターのバランス:★★
ドラグの調整:★★
ハンドルの左右入れ替え:可
ドラグの調整がシビア。ちょっと捻るとかなりドラグ力が変化するが、決まってしまえばまあまあの効き具合。
ローターのブレも慣れてしまえば気にならないので、人とかぶらないタックルが好きな人にオススメ。
インスプールタイプのリールの選び方と注意点
カーディナル33は定期的に復刻版が発売されているが復刻版は結構高価。更に33以外は現行品ではない為、基本的には中古品を探す事になると思う。その時に気を付けたい点についていくつか考えてみた。
流通量と相場
中古を買う時にまず注意したいのがそれぞれの流通量と価格相場。
カーディナル33やミッチェル308/408は比較的流通量が多く、価格相場が落ち着きやすいので予算の計画が立てやすい。更にスペアパーツの流通もある事やメンテナンス方法などもブログ等にアップされている事から、後々のメンテナンスの観点からも安心感が高い。
一方で大森製作所やガルシアのリールの場合は流通量が少なく、価格が読みにくい。スペアパーツも手に入りにくいので後々困る可能性もあるが、その代わりに人とかぶりにくいというメリットがある。
インスプールタイプのリールを選ぶ動機の一つとして見た目が気に入るかどうか、というのは重要なファクターなので、少々手間がかかってもお気に入りの1台を見つける、という選択肢もアリかと思う。
ベールアームとラインローラー
次に気を付けたいのがベールアーム周り。
インスプールタイプのリールは返したベールを手で戻せない構造の物が殆どなのだが、それを無理やり戻す事によって曲がってしまっている個体を結構良く見かける。
トラブルを避ける為にはなるべく曲がっていない個体を選ぶに越した事は無いが、敢えて直して使うつもりでその分安く手に入れる、という選択肢もある。とりあえずうっかり曲がっている事に気づかず高値で買ってしまう事は避けたい所である。
また、べールアームが曲がっていなくてもベールスプリングは消耗品で、当たり前のようにいつかは折れる物なので、そのへたり具合やスペアの入手方法も考えておいた方が良い。
ベールアームと合わせて確認したいのがラインローラー周り。ベールアームが曲がっているとついでにラインローラーの土台部分の金具も曲がっていたりするので、そのせいで全くローラーが回らなかったりもする。また、古い物が多いので錆びついていたりする事もあるので、良く見ておくに越した事はない。
ギアの種類とゴリシャリ感
インスプールタイプのリールに限らず、中古リールを買う時に気になるのがギアのゴリ感やシャリ感の有無。
当然無いに越した事は無いのだが、ギアの特性で新品でも発生するであろうゴロ感と、経年劣化によるゴリ感の違いには注意したい。
例えばベベルギアを採用したミッチェルの308はゴロゴロ感が半端無いが、かなり状態の良い個体でも普通にゴロゴロしてるので、それを許容できるかどうか、というのも考えておく必要がある。
現代のリールに近い感覚を求める人にはウォームギアかハイポイドフェースギアを採用しているモデルを選ぶのがおススメ。
ローターのブレについて
現行モデルと比較するとローターのバランスが悪い物が多いのがオールドスピニングの特徴。
これについてもギアと同様に、元々のバランスの悪さによるブレなのか、経年劣化や摩耗によるブレなのかを見極める必要がある。
理想的には現物のボディを押さえた状態でローターを前後左右にカタカタ動かしてみて遊びが無いか確認する事だが、ネットで買う場合は現物を触る事はできないので、写真やコメント等からどの程度の情報が取れるかがキーとなる。
まとめ
とりあえず一連の買い物で気づいた事をまとめてみたが、今後また気づいた事があれば追記しておこうと思う。
まあ今回書いたような事をああでもない、こうでもないとか考えながら中古品を選ぶのもオールドリールの楽しみ方の一つだと思う。
その結果手にしたリールは手間がかかってもその分愛着が湧くもの。気長に付き合っていきたい。