最近ガルシア3800とダイアモンドマイクロ7を買った事でインスプールタイプのスピニングの魅力にハマりつつあるのだが、こうなるとやっぱりインスプールタイプのリールの王道であるカーディナル33を使ってみたくなった。
そこで中古で良さげな物を物色してみた所、1.5万程で程度の良い2003年復刻版を入手する事ができた。
独特なカラーリングと、シンプルだが機能的な構造が魅力のカーディナル33をインプレ。
カーディナル33とは?
カーディナル33はアブ社が1976年にリリースしたインスプールタイプのスピニングリール。
調整が容易で高性能な「スターンドラグ」、頑丈なアルミダイキャストボディ、折り畳み式のベイルアームとハンドル、滑らかに回転するウォームギア式の駆動部、ワンタッチで取り外しが可能なスプールなど、現代でも通用する様々な機能と、独特で味のあるデザインが人気のリールである。
フェザリングがしやすい形状、ベールオートリターン方式による手返しの良さ、そして自然に溶け込むクラシックなデザインが相俟って、渓流ルアーマンに高い人気を誇る。
一旦生産終了した後もその人気は衰えず、1989年と2003年に復刻版がリリースされ、現代でも毎年のように復刻版が作られている。
基本スペック(2003年復刻版)
モデル | 標準自重(g) | ギア比 | ボール/ローラーベアリング | ラインキャパシティ(m) | |||
0.15mm(約0.8号) | 0.20mm(約1.5号) | 0.25mm(約2号) | 0.30mm(約3号) | ||||
33 | 220g | 5.1:1 | 1+0 | 320 | 200 | 150 | 100 |
サイズは大体現行の2000番クラスくらい。重量は金属ボディにしては軽めの220g。箱や説明書には記載がないが、スプール径が44mmなので、ハンドル1回転あたりの巻取量は最大70.5cm。デビューした当時からするとかなり高速な部類に入る。現行リールと比較すると特筆して速いわけではないが、渓流で使うにしても十分な巻取量であると言える。
機能仕様
スターンドラグ
いわゆるリアドラグの一種で、ラインに触れたりする事なくファイト中に調整ができるのがポイント。ダイヤル位置は操作しやすい位置にあり、クリック機能付きで、ダイヤルを調整した量に応じて滑らかにドラグの効きが変わる。
内部構造は以下の通り。
ドラグダイヤルを締めると内部のL字の金具がダイヤルから押される方向に動き、その力がドラグワッシャーを前方へ押し付ける力に変換される仕組み。
アルミダイキャストボディ
ボディフレームはアルミダイキャスト製。主要な機構は全て一体構造のボディで支持されているので、ボディの歪みやサイドプレートの組み付けによる回転への影響が最低限に抑えられるようになっている。
折り畳み式ベイルアーム
ベイルストッパーを手でずらしてやることで、ベイルアームを折りたたむ事が可能。バックパックに荷物を詰めて山奥の渓流を上ったりする時に便利。
折り畳み式ハンドル
ベールだけでなく、ハンドルも折りたたむ事が可能。ねじ込み式ハンドルなので、ローターを押さえて逆転方向にハンドルを回すと取り付けが緩んで折りたためるようになる。
ワンタッチ着脱式スプール
スプールはスプール上部の真ん中のボタンを押すとワンタッチで取り外す事ができる。インスプールタイプのリールは時にスプールシャフトにラインが絡んだりするが、スプールがワンタッチで外せればトラブルからの復旧は容易。スペアスプールを用意しておくことで更に安心感は増す。
ウォームギア
ドライブギアにはウォームギアを採用。これによって滑らかな回転を実現している。
アンチリバース
アンチリバースはラチェット式。ハンドルの付け根の下側のスイッチをスライドさせるとアンチリバースがONとなる。
パッケージ
2003年復刻版のパッケージはこんな感じ↓
側面に書かれた説明文には美しいデザインのリールとあるが、その看板に偽り無し。
リトリーブ速度は他のどの同サイズのリールより早い、とあり、当時としてはかなり高速な部類であった事が伺える。
外観など
左から↓
左斜め前から↓
前から↓
右斜め前から↓
右から↓
右斜め後ろから↓
後ろから↓
左斜め後ろから↓
上から↓
下から↓
ダークグリーンのボディに緑がかった白いローター、黒いスプールといったカラーリングが唯一無二。最初にこのカラーリングを設定した人のセンスは素晴らしいと思う。
装飾は殆ど無く、ワンポイントであしらわれたスウェーデン王室の紋章、クレストマークが上品である。
サイズ感
サイズ感は現行の2000番くらい。17エクセラーと並べるとこんな感じ↓
重量について
カタログスペックでは220g。実測は224.3gとまあ誤差の範囲。
ハンドルについて
ハンドル長は45mm。ねじ込み式ハンドルなのでガタ付きは少ない。
ハンドルノブはプラ製。単純な四角形とかではなく、指にフィットするような絶妙な曲線を描いている。ねじ止めなので交換も可能で、ウッドノブとかに変えている人も多い。
スプールについて
スプールは樹脂製で直径は44mm。
幅は約11mm。
裏から見るとこんな感じ↓スプールシャフトが入る穴に真鍮製のパイプが入っている。
復刻版の中にはこのパイプが無く、樹脂そのままの物もあるみたい。
糸巻量について
メーカー取説によると、スプールエッジから1.5mm程空けて巻くのが適量との事。
3号-100mとの事なので、とりあえずダイソーナイロン3号を100m程巻いてみた。
この場合の巻き上がりはこんな感じ↓
量的には丁度良いと思うが、前側が少な目で後ろ側が多めのプリン巻きになった。
復刻版カーディナルではこの状態になる個体がかなり多いらしいので、これは想定内。もちろんそのままにはしておけないので、平行巻きになるように手を入れる事に。
カーディナル33の平行巻き化
カーディナル33のプリン巻き対策(平行巻き化)の方法は大きく分けて3種類。
①下巻きを逆テーパーになるよう手巻きした後に通常使用する分のラインを巻く
②ローターの付け根にワッシャーを挟んでローター位置を上げる
③スプールシャフト後端を加工してスプールを下げる
難易度的には①→②→③の順。特に③については本体の部品を加工する事になるのでハードルが高い。なのでまずは①、②の方法で対策を行ってみた。
IOSのカーディナル用エコノマイザーを使ってみた
方法としては①に相当。テーパーがついた形状になっているので、スプールに取り付けるだけで簡単に逆テーパー状態が準備できるというスグレモノである。
取り付けは簡単で、2分割された部品でスプールを挟むだけ。
・・・というとスムーズな感じだが、実際に取り付ける際はかなり固いので注意が必要。
管理人は握力50kgはあると思うのだが、1回目は完全に閉める事ができないくらい固かった。
こんなに押し込んでスプール大丈夫なの!?割れないの!?と心配になるくらい。
一応IOSのHPを見るとそれなりにキツくて当たり前のようだが、加減がどうにも分からない。
ちょっと削ろうかな・・・と思ったのだが、何回か着脱したら何とか閉じられるようになった。
この状態だと4lb-100mとなるとの事なので、海平の1号を100m巻いてみた。
巻き上がりはこんな感じ↓
見事に平行巻きになった。ちょっと取り付けに苦労したが、付いてしまえば後はもう何もしなくても平行巻きが維持できるのでなかなか良いアイテムだと思う。
【IOSファクトリー】 カーディナル用 IOS エコノマイザー
ローターの付け根にワッシャーを挟んでみた
エコノマイザーで解決できることは分かったが、スペアスプールもあるし太目の糸を巻く事を考慮して、ローター位置の調整にもチャレンジしてみる事に。
ワッシャーは外径11.8mm、内径7.8mm、厚み0.8mm~1mmが良いとの事なので、今回はコレを購入↓
ポリカ製のワッシャーの入ったネジセット。価格は150円くらい。
本当はワッシャーだけで良かったのだが、ワッシャーだけのが無かったのでとりあえずコレで。
ワッシャーのサイズは外径12mm、内径5.5mm、厚み0.8mm。
コレの内径を大きくして、外側をちょっと削ればきっと使えるはず。
で、加工したものがコレ↓左が加工後、右が加工前。ハンドリーマーで拡張してヤスリで面取り・・を繰り返して作成。
ローターを外して、ローターとベアリングの間にワッシャーを挟む。
で、3号ラインを巻いてみると・・・こんな感じになった↓
結構良い感じに平行巻きになったので成功と言えそう。
ちなみに、ローターを上げすぎるとベールを返す部分にローター内部の爪が当たらなくなってベールが返らなくなるので注意。
このパターンは手間はかかるが安価にできるのと、スプールを変えても効果が持続するという点ではエコノマイザー方式に勝る。
IOSのエコノマイザーと併用すると恐らく逆ハの字になるので、飛距離は落ちるがトラブルは減る方向になるのかもしれない。今度ちょっと試してみよう。
内部の構造について
内部の構造はドラグがある分ガルシア3800やダイアモンドマイクロ7DXより若干複雑だが、まあパッと見た感じでそれぞれの機能は大体理解できる。
ハンドルを回すとこんな感じ↓(動画:約7MB)
ウォームギアのお陰で回転はかなり滑らか。最近のリールと比較しても全く遜色ない感じ。これでベアリングは1個しか入ってないのだから、ベアリングの有無よりもそもそもの構造が大事、という事なんだろう。
ラチェット音について
アンチリバースがラチェット式なので、ONにして回転させるとカリカリと音がする。グリスの塗布具合で変わったりするが、カーディナル33の音は比較的静かな方だと思う。
実際の音はこんな感じ↓(動画:約12MB)
ベールリターン方式について
ベールを起こすのは最近のスピニングリールと同様にベールを手で掴んで起こす訳だが、戻す時には注意が必要。
手で返そうとしてもベール下の小さなストッパーをどかさないと返せないようになっているので、ハンドルを回してローターを回転させる事でベールを戻さないといけない。
やってみるとこんな感じ↓(動画:約13MB)
ベールを起こす為の部品はローター1回転に対して1か所に配置されていて、起こしたローターが手前に来た時に接触するようになっている。一方で、ある程度勢いをつけてベール返しに当てる必要がある為、ベールを起こす時はリール下方に向けて起こすようにすると良い。
渓流で使ってみた
4lbナイロンを巻いて、5ft/Lアクションのファインテールとの組み合わせで使ってみた。
投げてみた感じ
やはりフェザリングがしやすいのが良い。
ラインの放出はスムーズなので、フェザリングのしやすさと合わせて、狙った所に投げる、という点ではかなり使いやすい。
巻いてみた感じ
ハンドル1回転あたりの巻取り量はミノーのトゥイッチをするにも十分な速さ。
巻き心地もかなり滑らかなので、スピナーの回転なんかもしっかり手元に伝わってくる。
ライントラブルについて
ラインローラーはちゃんと回っているのに糸ヨレは結構激しいので、気づくとスプールから輪っかがはみ出している事がある。2時間程の釣行で1回絡まったラインがモサっと出てくる事があったが、直せないレベルでは無かったのでまだ我慢できる範囲だと思う。
魚とのやりとり
ドラグが出るような魚は釣れてないが↓くらいの魚を上げるのには何ら問題無し。
これは別の日の魚↓
まとめ
実際に使ってみたらカーディナルの良さが少しわかった気がする。
デザイン性については見るからに優秀だが、機能についても昨今のリールと比較しても十分戦えると思う。特に渓流では滑らかに巻ける事と、手返し良く投げられる事のウェイトが多くを占めるので、その点だけ見れば十分だと思う。
糸ヨレしやすいのでラインのテンションをフリーにする事が多いバス釣りだと微妙かもしれないが、渓流釣り師に人気があるのは納得である。
今度はコレでもっと大物を釣ってみたいと思う。